関税を原則として撤廃し、貿易ルールをアメリカなど輸出大国に合わせるTPPに対して、農業関係者はもちろん、多くの生産者も消費者も不安を強め、反対の声をあげています。とりわけ致命的な打撃を受ける農業関係者の不安は深刻です。マイナス面を過小に評価し、効果を過大にいいつのる無責任な姿勢に批判が高まるのは当然です。
安倍首相はTPP交渉でも最大の焦点になった農業問題について、「関税撤廃の例外を確保した」「国益にかなう最善の結果を得ることができた」と述べました。
しかし交渉結果は、コメ・麦、食肉など重要5項目でさえ30%の品目で関税撤廃を受け入れ、アメリカやオーストラリアには新たなコメの輸入枠さえ設定しました。5項目を関税撤廃の例外にするよう求めた国会決議に明らかに違反しています。
安倍首相は、「農家の皆さんの手間暇がまっとうに評価されるようになる」などと述べましたが、全くその保証はありません。
政府は輸入の増加で一部で価格は低下するが、国内生産は減少しないとする試算を発表しています。国産品の品質が良いから輸入品と競合せず、TPP対策によって農家が経営規模の拡大などで国際競争力をつければ生産量は維持でき、輸出も増えるといいます。
しかし、日本の農業が縮小を続けてきた重要な要因は、農産物の輸入自由化・拡大でした。
歴代自民党政府は輸入拡大を野放しにし、「国際競争力の強化」を理由に農業の規模拡大や効率化を促し、それに対応できない中小経営や産地を政策対象から排除してきた結果、今日の農業危機、食料自給率の低下、地域経済の困難を招いたのです。
TPP締結が日本の農業に影響しないというのはきわめて非現実的です。
首相は、2015年の農産物の輸出が7000億円を超え、20年の1兆円目標にも手が届くと述べました。しかし、その輸出額(14年)の約4割が水産物、3割が加工食品で、農産物はわずかです。輸出額の増加には円安の影響も少なくありません。円安は、飼料、生産資材の値上がりを招き、農業経営の困難も加速させています。首相の演説がは現実とかい離しています。
TPPは参加国による署名の日程も2月4日に決まり、批准が焦点です。大企業とアメリカの利益を優先し、国の在り方を変えるTPPを阻止しましょう。
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